甲田先生

最近、聖路加国際病院名誉院長の日野原重明先生(94歳)著の『生きかた上手』という本を読み、人生のQOLについて色々考えさせられました。

人生の中年とは50歳から始まるということ、50歳代のうちに本当の自分に出会っておくことが、その後に続く人生の豊かさを左右するということを再認識したのです。はたして幸福とは何でしょうか。スイスの哲学者カール・ヒルティ(1833〜1909年)は次のように言っています。「人生の幸福は困難に出会うことが少ないとか、まったくないとかということにあるのではなく、むしろあらゆる困難と戦って輝かしい勝利をおさめることにある。」本当にその通りだと思います。ユダヤ系オーストリア人の精神医学者ヴィクトール・E・フランクル(1905〜1997年)の言葉はもっと控えめです。「幸せは決して目標ではないし、目標であってはならないし、さらに目標であることはできません。それは結果にすぎないのです」と。幸福は求めて得られるようなものではない。結果として与えられるにすぎないと言っているのです。生き方や習慣は意志によって獲得できますが、幸福はそうはいかない、あくまで心の状態を言うのです。それも瞬間的な快楽や、若い男女の恋愛における幸福感のようなものではなく、むしろ、もっと持続した心の平安こそが本質であるような気がします。

さて、2020年には日本人の4人に1人が65歳以上になると予測されています。これほど爆発的な少子高齢化は世界中のどこにも前例がありません。世の中では一般に65歳以上を「高齢者」と呼んでいますが、今後70歳になり、さらに75歳以上になるかもしれません。また、検査データの基準も変わってきています。かつて100mg/dlより高いと糖尿病が疑われた血糖値は20年程前110mg/dlになり、先頃126mg/dlにまで引き上げられました。高血圧の定義も今後変わるかもしれません。80歳以上の高齢者を念入りに調べたら、動脈硬化はあるに決まっていますし、多くに萎縮性胃炎もたぶん見られるでしょう。老化による体の衰えや、不幸にして治る見込みのない病に見舞われても私達は「欠陥があるにもかかわらず健やかである」という生き方を求めていくべきだと思います。

現在、日本歯科医師会と厚生労働省は8020運動(80歳になっても20本自分の歯を保ちましょう)というキャンペーンを展開していますが、将来8020という数字も変わるかもしれません。むし歯や歯周病などの予防と早期治療の重要性を認識してもらうために8020運動は大変良いことだと思います。そして今後、医療、歯科医療の進歩と国民の健康度の高さから考えると多くの8020達成者が増えていくでしょう。しかし、反面8020達成できず、がっかり肩を落とされる高齢者を見ると少し考えさせられる面もあります。8020の達成が絶たれた方々のデンタルケア、セルフケアのモチベーションが一気に下がる心配があると思うのです。

そして最後に極端なことで恐縮ですが、8000(80歳で自分の歯が0本)の方々でも、医師、歯科医師の努力により、上下総義歯で健やかに毎日を過ごしておられる高齢者がいらっしゃるのも事実なのです。

(2006年4月)

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