大前先生
「牛肉偽装事件」で食肉業界最大手の日本ハムが揺れている。新聞報道によると、創業者の実力会長が、関係する一切の役職から退き、「完全引退」とのことである。当初発表された「勇退」扱いではなく、「詰め腹」を切らされた格好である。事件の本質と原因を考えるとき、組織のトップの身の処し方としては致しかたないとは思うが、創業者の心中察して余りある。
ところで、私が気になるのは、誰が「詰め腹」を切らせたのかである。一代であれだけの企業を育てた立志伝中の人物に引導を渡したのは、農水省トップである。早期の営業再開を望めば、従わざるをえなかったと思われる。ただ、一連の偽装事件のそもそもの原因が、国の「買い上げ制度」自身にあることは、誰の目にも明らかなことである。営利を追求する民間企業に高い倫理性を求めるより、悪用されない制度を創りあげることのほうが、実際的であり、今回のケースでも、それは容易になしえたはずである。なぜ、あんなに悪用され易い、業界の人間を、高いモラリストと扱うような制度を強行したのであろうか。やはりそこには、長年の「官」と「業」のもたれあいが影響していたということを軽視した、あまりにも安易な業界救済措置であったことは事実であろう。当該制度が運用されれば、このような事態に至ることは当然予想されたし、私は、役所はそれに暗黙の了解を与えていたと理解していた。それゆえ、万一の場合には、当然、役所のしかるべき人間が責任をとると思っていたのだが、実際には、民間人の首をとって、さも自慢気で、相変わらずの無責任体質である。
今回の事件で私は怒っている。それは日本ハムに対してではなく、農水省、及び日本の「お役人」に対してである。日本の誇る「高級官僚」は、そんなに「バカ」なのか、それともただの恥知らずな無責任な連中の集まりなのか、彼らの気概を知りたい。
最後に、私はこの夏、真珠湾のアリゾナ記念館を父と訪れた。旧日本海軍の人間魚雷KAITENが展示されていた。手を合わせる父が「これを考えた人々は、これには乗らんかったんや」と呟いたのを思い出した。
その後それらの責任者達は玉音放送の翌日、割腹したと知る所である。
(2002年8月)

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